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  • Maydo Journal #021

    Maydo Journal #021

    ブランディングを始めるとき、僕が最初に聞きたい質問がある。

    それは、
    「どんな商品ですか?」でも、
    「競合はどこですか?」でも、
    「売上目標はいくらですか?」でもない。

    もちろん、それらも大切だ。
    でも、最初に聞きたいのは、もう少し手前にある問いだ。

    「なぜ、この仕事を続けているんですか?」

    この質問をすると、少し空気が変わることがある。

    すぐに答えられる人もいれば、
    少し黙って考える人もいる。
    「いや、改めて聞かれると難しいですね」と笑う人もいる。

    でも僕は、その少し考え込む時間がとても大事だと思っている。

    なぜなら、ブランドの種は、
    きれいに整えられた言葉の中ではなく、
    その沈黙や迷いの中にあることが多いからだ。


    地方企業や中小企業の方と話していると、
    自分たちの強みを聞かれたときに、
    だいたい似た答えが返ってくることがある。

    「品質にはこだわっています」
    「丁寧に作っています」
    「地域に根ざしてやっています」
    「お客さんとの関係を大切にしています」

    どれも間違っていない。
    むしろ、どれも本当に大切なことだと思う。

    ただ、それだけでは少し届きにくい。

    なぜなら、多くの会社が同じように
    「丁寧です」
    「品質が良いです」
    「地域密着です」
    と言っているからだ。

    だから、僕が知りたいのはその奥にある理由だ。

    なぜ、そこまで丁寧に作るのか。
    なぜ、その品質を守りたいのか。
    なぜ、地域に根ざすことを大切にしているのか。
    なぜ、その仕事を今も続けているのか。

    この「なぜ」の部分に、
    その会社にしかない温度がある。


    以前、ある会社の方と話していたとき、
    最初は「うちの強みは技術力です」と言われた。

    もちろん技術力は大事だ。
    でも、それだけだと少し抽象的で、
    外から見る人には違いが伝わりにくい。

    そこで、いろいろ話を聞いていくと、
    その技術は単に難しいことができるという話ではなく、
    「お客さんが困ったときに、最後までなんとか応えたい」
    という姿勢から生まれていることが分かった。

    つまり、その会社の本当の強みは、
    技術力そのものというより、
    困っている人を放っておけない姿勢にあった。

    この違いは大きい。

    「高い技術力があります」と言うのと、
    「困っている人を最後まで支えるために、技術を磨いてきました」と言うのでは、伝わる意味が変わる。

    同じ事実でも、
    どこに光を当てるかで、
    ブランドの見え方はまったく変わる。


    ブランディングというと、
    新しい言葉を作ることだと思われることがある。

    かっこいいコピーを作る。
    おしゃれなデザインにする。
    見栄えを整える。

    もちろん、それも必要な場面はある。

    でも、僕が大事にしたいのは、
    外から何かを足すことではなく、
    すでに中にあるものを見つけることだ。

    その会社が大切にしてきたこと。
    無意識に続けてきたこと。
    当たり前すぎて言葉にしてこなかったこと。

    そういうものの中に、
    ブランドの核が眠っている。

    だから、最初に聞く質問は、
    「どう見せたいですか?」ではなく、
    「なぜ続けているんですか?」になる。

    見せ方の前に、
    意味を見つけたいからだ。


    面白いのは、
    この質問に対する答えは、
    最初からきれいに出てこないことが多い。

    むしろ、まとまっていない方が自然だと思う。

    「昔からやっているから」
    「先代から続いているから」
    「お客さんがいるから」
    「やめる理由がなかったから」

    最初はそんな言葉でもいい。

    そこから少しずつ掘っていく。

    なぜ、先代から続いていることを守りたいのか。
    なぜ、そのお客さんに応えたいのか。
    なぜ、やめずに続けてこられたのか。

    問いを重ねていくと、
    少しずつ言葉の奥にあるものが見えてくる。

    それは、使命感かもしれない。
    誇りかもしれない。
    悔しさかもしれない。
    誰かへの感謝かもしれない。

    ブランドの核は、
    案外そういう人間らしい感情の近くにある。


    良い会社ほど、
    自分たちの価値を大げさに語らないことが多い。

    「そんなの普通ですよ」
    「当たり前のことをしているだけです」
    「うちは特別なことはしていません」

    そう言う会社の中に、
    実はとても大切な価値が眠っていることがある。

    ただ、それが言葉になっていないだけだ。

    外から見ると特別なことでも、
    中にいる人にとっては日常になっている。

    だからこそ、
    一度立ち止まって、
    自分たちの当たり前を見直す必要がある。

    ブランドづくりは、
    特別なものを無理に作ることではない。

    当たり前の中にある意味を、もう一度見つけ直すこと。

    そう考えると、
    ブランディングはもっと身近なものになる。


    「なぜ、この仕事を続けているんですか?」

    この問いに、すぐ答えられなくてもいい。

    むしろ、すぐに答えられないところから始まることもある。

    大切なのは、
    その問いから逃げずに、
    少しずつ自分たちの言葉を探していくことだと思う。

    会社の強みは、
    資料の中だけにあるわけではない。

    現場の空気。
    職人さんの手の動き。
    お客さんとの何気ない会話。
    長く続けてきた習慣。
    やめなかった理由。

    そういうものの中に、
    その会社らしさはにじみ出ている。

    それを見つけて、
    言葉にして、
    外に伝わる形にしていく。

    それが、僕の考えるブランディングだ。


    もし今、
    自分たちの会社の魅力がうまく伝わっていないと感じているなら、
    まずはこの問いから始めてみてもいいかもしれない。

    なぜ、この仕事を続けているのか。

    その答えの中に、
    まだ言葉になっていないブランドの種がある。

    そして、その種を見つけることができれば、
    会社の見え方は少しずつ変わっていく。

    ブランドは、外から飾るものではなく、
    内側にある意味を、見える形にしていくものだから。

  • Maydo Journal #020

    Maydo Journal #020

    先日、ある地方企業の社長と話していたとき、こんな言葉を聞いた。

    「うちは小さな会社だから、ブランディングなんて大げさですよ。」

    地方で仕事をしていると、この言葉を本当によく聞く。
    むしろ、ほとんどの会社がそう思っているのではないだろうか。

    日々の仕事に追われている。
    人手も限られている。
    マーケティング専門の部署があるわけでもない。

    まずは目の前の仕事をきちんとやること。
    既存のお客さんに迷惑をかけないこと。

    それだけでも十分に忙しい。

    だから「ブランド」という言葉は、どこか都会の会社の話のように聞こえるのかもしれない。

    ただ、地方企業をいくつも見ていると、
    ひとつ面白いことに気づく。

    本当に良い会社ほど、自分たちの価値を言葉にしていない。


    地方には、本当に良いものが多い。

    長く続いてきた技術。
    丁寧なものづくり。
    地域と一緒に育ってきた会社。

    どれも価値のあるものだ。

    ただ、それが外から見たときに、
    うまく伝わっていないことが多い。

    どんな想いで作っているのか。
    なぜこの商品なのか。
    何を大事にしている会社なのか。

    作っている側にとっては当たり前のことでも、
    外から見ると分からない。

    結果として、

    「良い商品なのに、なぜか選ばれない」

    そんな状況が生まれてしまう。


    ブランディングという言葉を聞くと、

    ロゴを作る。
    デザインを整える。
    広告を出す。

    そんなイメージを持たれることが多い。

    もちろん、それも大事な要素ではある。

    ただ、実際にブランディングの仕事をしていて感じるのは、
    もう少し違うところに本質があるということだ。

    それは、

    その会社が大切にしている意味を、外から見える形にすること。

    なぜこの仕事をしているのか。
    何を大事にして続けてきたのか。
    どんな価値を届けたいのか。

    それを言葉にしていく。

    すると不思議なことに、
    会社の輪郭が少しずつ見えてくる。


    地方企業を見ていて、もうひとつ思うことがある。

    地方の会社ほど、
    実は強いストーリーを持っている。

    何十年も続いてきた会社。
    家族で守ってきた技術。
    地域と一緒に育ってきた商品。

    都会のスタートアップにはない背景を持っていることも多い。

    ただ、それが

    当たり前すぎて言葉になっていない。

    ブランディングの仕事をしていると、
    新しいものを作るというより、

    すでにある価値を見つけていくこと

    の方が多い気がする。


    地方企業の多くが直面するのは、価格の問題でもある。

    似た商品が並ぶ中で、
    どうしても価格で比較されてしまう。

    「もう少し安くできますか」

    そんな言葉を聞くことも少なくない。

    でも本来、
    価値がきちんと伝われば、
    人は価格だけで選ばなくなる。

    なぜこの会社なのか。
    なぜこの商品なのか。

    その理由が見えると、
    値段の見え方も変わってくる。

    ブランドとは、
    価値の理由をつくることなのかもしれない。


    昔は、地方で仕事をしていると
    情報にも市場にも距離があった。

    でも今は違う。

    SNSもあるし、
    ECもある。
    AIもある。

    どこにいても、
    世界とつながることができる時代になった。

    だからこそ大事なのは、
    自分たちが何者なのかを言葉にできることだと思う。


    ブランディングは、
    会社を飾るものではない。

    むしろ逆で、

    会社の中にあるものを、
    少しずつ整理していく作業に近い。

    自分たちは何を大事にしているのか。
    何を続けていきたいのか。
    どんな会社でありたいのか。

    その問いを整理していくと、
    会社の意味が少しずつ見えてくる。

    そしてそれが、
    外にも自然と伝わるようになる。


    地方には、まだ言葉になっていない価値がたくさんある。

    それを整理して、
    意味として届けていく。

    その仕事には、
    まだまだ大きな可能性があると思っている。

    地方企業の未来は、
    きっともっと面白くなる。

    ただ、その価値が
    まだ見える形になっていないだけなのかもしれない。


    もしあなたの会社にも
    「うまく言葉にできていない価値」があるなら、

    それはまだ、
    伸びしろがあるということだと思う。

    ブランドは、
    新しく作るものではなく、

    すでにある意味を、見える形にすること。

    地方企業の未来は、
    そこから大きく変わっていく気がしている。