• Maydo Journal #023

    Maydo Journal #023

    「うちの商品は、本当に良いものなんです。」

    地方企業の方と話していると、この言葉をよく耳にします。
    実際に工場や店舗、現場を訪れると、その言葉に納得することばかりです。

    長年積み重ねてきた技術。
    妥協しないものづくり。
    お客さんとの信頼関係。

    どれも、一朝一夕では築けない価値です。
    だからこそ、いつも思います。

    「こんなに価値があるのに、なぜ伝わらないんだろう。」


    「地方だから仕方ない。」

    そんな言葉で片付けられることもあります。

    人口が少ない。
    都会より情報が集まりにくい。
    発信が苦手。

    もちろん、それも理由の一つでしょう。
    でも、僕はそれだけではないと思っています。

    地方には、全国に誇れる技術やサービスを持った会社がたくさんあります。価値がないわけではない。

    その価値が、正しく伝わっていない。

    そこに課題があるように感じています。


    豊岡に移り住んで6年。

    観光、小売業、製造業、サービス業など、多くの事業者の方と出会ってきました。

    共通して感じるのは、誠実な会社ほど、自分たちのことを語るのが苦手だということです。

    「こんなの当たり前ですよ。」
    「昔から続けているだけです。」
    「特別なことは何もないですよ。」

    そんな言葉をよく聞きます。

    でも、その”当たり前”こそが、その会社だけの価値だったりします。
    毎日続けているから、自分たちでは特別だと思えない。

    だから、外から見た魅力との間に、大きなギャップが生まれてしまうのです。


    ブランディングの仕事をしていると、商品やサービスの話だけで終わることはほとんどありません。

    「なぜ、この仕事を続けているんですか?」

    そう聞くと、最初は少し戸惑われます。
    でも、話を重ねていくうちに、

    「父が始めた仕事だから。」
    「お客さんが喜ぶ顔を見るのが好きだから。」
    「地域にこの仕事を残したいから。」

    そんな言葉が少しずつ出てきます。
    僕は、その瞬間が好きです。

    商品の特徴ではなく、その会社が大切にしてきた”意味”が見えてくるからです。


    何度も言いますが、ブランディングというと、ロゴを変えたり、ホームページを新しくしたりすることだと思われることがあります。

    もちろん、それも大切です。
    でも、本当に大切なのは、その前にある問いです。

    「私たちは、なぜこの仕事をしているのか。」

    その答えが見えてくると、会社の見え方は変わります。

    発信も変わる。
    採用も変わる。
    営業も変わる。

    ブランドとは、見せ方ではなく、考え方の積み重ねなのだと思います。


    AIの進化によって、文章もデザインも、誰でも一定の品質で作れる時代になりました。

    便利になった一方で、違いをつくることは難しくなっています。
    だからこそ、これから価値になるのは、その会社にしか語れない話です。

    なぜ、その仕事を選んだのか。
    なぜ、その品質にこだわるのか。
    なぜ、今も続けているのか。

    そこには、生成AIではつくれない時間があります。
    積み重ねてきた歴史があります。

    そして、人の想いがあります。


    僕は、地方企業にはまだ言葉になっていない価値が、たくさん眠っていると思っています。

    だから、「もっと発信しましょう」とは言いません。

    その前に、

    何を伝えるべきなのか。

    そこを一緒に考えたい。

    ブランディングは、新しい価値をつくる仕事ではありません。

    もともとある価値を見つけ、その”なぜ”を言葉にし、社会に伝わる形へ整えていく仕事です。


    Maydoのミッションは、

    「その“なぜ”を、かたちに。」

    そして、目指しているのは、

    「意味のあるものが、正しく届く社会」。

    地方には、まだ知られていない価値があります。
    でも、その価値は、誰かが代わりに見つけてくれるものではありません。
    自分たち自身が、その意味を見つめ直し、言葉にしていくことが大切です。

    そのお手伝いをすることが、僕たちMaydoの仕事です。

    新しい価値をつくるためではなく、

    もともとある価値を、正しく届けるために。

  • Maydo Journal #022

    Maydo Journal #022

    ブランディングの相談を受けるとき、よく聞く質問がある。

    「御社の強みは何ですか?」

    この問いに、すぐ答えられる会社は意外と少ない。

    もちろん、何も答えられないわけではない。
    多くの場合、こんな言葉が返ってくる。

    「品質には自信があります」
    「丁寧に作っています」
    「技術力があります」
    「お客さんとの関係を大切にしています」
    「地域に根ざしてやってきました」

    どれも間違っていない。
    むしろ、本当に大切なことだと思う。

    でも、話を聞いていると、いつも少しだけ引っかかる。

    それは、その言葉が本当に“その会社だけの強み”として届いているかどうかだ。

    品質が良い。
    丁寧である。
    技術力がある。
    お客さんを大切にしている。

    これらは素晴らしいことだけれど、多くの会社が同じように言っている。
    だから、そのままだと違いが見えにくい。

    つまり、強みを語っているようで、実はまだ“選ばれる理由”までは言葉になっていないことが多い。


    強みとは、単に優れている点のことではないと思う。

    もちろん、技術や品質は大切だ。
    価格、納期、対応力、実績も大事な要素になる。

    でもブランディングの視点で見ると、強みはもう少し深いところにある。

    それは、
    なぜ、その会社が選ばれているのか
    という理由に近い。

    たとえば「丁寧に作っています」という言葉があったとする。

    それ自体は良いことだけれど、まだ少し抽象的だ。
    そこで、もう一歩だけ深く聞いてみる。

    なぜ、そこまで丁寧に作るのか。
    どんな場面で、その丁寧さが生きているのか。
    誰のために、その丁寧さを守っているのか。

    すると、その会社らしい言葉が少しずつ出てくることがある。

    「修理で戻ってきたときに、長く使われているのを見るとうれしいんです」
    「お客さんが困ったときに、最後に頼ってもらえる会社でいたいんです」
    「派手ではないけれど、毎日ちゃんと使えるものを作りたいんです」

    こういう言葉の中に、本当の強みの輪郭が見えてくる。


    良い会社ほど、自分たちの強みに気づいていないことがある。

    外から見ると特別なことでも、中にいる人にとっては当たり前になっているからだ。

    「そんなの普通ですよ」
    「昔からずっとやってきたことです」
    「特別なことはしていません」

    そう言われることがある。

    でも、ブランディングの仕事をしていると、むしろその“普通”の中にこそ価値があると感じる。

    長く続けてきたこと。
    無意識に守ってきたこと。
    面倒でもやめなかったこと。
    お客さんに言われる前から、自然にやっていること。

    そういう日々の積み重ねが、その会社の強みになっている。

    強みは、突然作るものではない。
    すでにあるものを、もう一度見つけ直すものなのだと思う。


    強みを見つけるときに大事なのは、競合と比べることだけではない。

    もちろん、比較は必要だ。
    市場の中でどう見られているのかを知ることも大切だと思う。

    でも、比較ばかりしていると、自分たちの良さが見えなくなることがある。

    「あの会社の方が大きい」
    「あの会社の方が発信がうまい」
    「あの会社の方が価格が安い」

    そうやって外ばかり見ていると、いつの間にか自分たちの中にある価値を見失ってしまう。

    本当に見つめるべきなのは、
    お客さんがなぜ自分たちを選んでくれたのか
    ということかもしれない。

    過去に言われた何気ない一言。
    長く付き合ってくれているお客さんの理由。
    他社ではなく自社に戻ってきてくれる人の声。

    そこには、会社の強みが隠れていることが多い。

    「対応が早くて助かる」
    「小さな相談にも乗ってくれる」
    「なんとなく安心する」
    「説明が分かりやすい」
    「この人たちなら任せられる」

    こういう言葉は、派手なコピーには見えないかもしれない。
    でも、選ばれる理由としてはとても強い。


    強みを言葉にすることは、自分たちを大きく見せることではない。

    むしろ、背伸びをしないために必要な作業だと思う。

    自分たちは何ができて、何を大切にしていて、誰の役に立てるのか。
    そこを整理できると、無理な見せ方をしなくてよくなる。

    強く見せるのではなく、ちゃんと伝える。
    盛るのではなく、見えるようにする。

    この違いは大きい。

    ブランディングというと、どうしても外側を整えることだと思われがちだ。
    ロゴ、デザイン、コピー、Webサイト、SNS。

    もちろん、それらも必要だ。

    でも、その前にやるべきことがある。

    自分たちの強みを、ちゃんと自分たちの言葉で理解すること。

    ここが曖昧なまま外側だけを整えても、どこか借り物のような印象になってしまう。


    「御社の強みは何ですか?」

    この問いに、すぐ答えられなくてもいいと思う。

    むしろ、すぐに答えられないところから始まる方が自然かもしれない。

    大切なのは、そこで諦めずに問い続けることだ。

    なぜ、お客さんは選んでくれているのか。
    なぜ、この仕事を続けてこられたのか。
    なぜ、自分たちはこのやり方を大切にしているのか。

    その問いを重ねていくと、少しずつ言葉が見つかっていく。

    強みは、どこか遠くに探しに行くものではない。
    日々の仕事の中に、もうすでにある。

    ただ、それがまだ言葉になっていないだけなのかもしれない。


    もし今、自分たちの会社の強みがうまく言えないとしたら、
    それは弱みではなく、まだ整理されていないだけだと思う。

    良い商品がある。
    続けてきた仕事がある。
    選んでくれているお客さんがいる。

    そこには必ず、何かしらの理由がある。

    その理由を見つけて、言葉にして、外に伝わる形にしていく。

    それが、僕の考えるブランディングの大事な一歩だ。

    強みは、作るものではなく、見つけ直すもの。

    そしてその強みが見えたとき、会社の見え方は少しずつ変わっていく。

    そんな事業の気付きが生まれる瞬間に立ち会える喜びは、僕にとっては対価以上の感動がある。