• Maydo Journal #022

    Maydo Journal #022

    ブランディングの相談を受けるとき、よく聞く質問がある。

    「御社の強みは何ですか?」

    この問いに、すぐ答えられる会社は意外と少ない。

    もちろん、何も答えられないわけではない。
    多くの場合、こんな言葉が返ってくる。

    「品質には自信があります」
    「丁寧に作っています」
    「技術力があります」
    「お客さんとの関係を大切にしています」
    「地域に根ざしてやってきました」

    どれも間違っていない。
    むしろ、本当に大切なことだと思う。

    でも、話を聞いていると、いつも少しだけ引っかかる。

    それは、その言葉が本当に“その会社だけの強み”として届いているかどうかだ。

    品質が良い。
    丁寧である。
    技術力がある。
    お客さんを大切にしている。

    これらは素晴らしいことだけれど、多くの会社が同じように言っている。
    だから、そのままだと違いが見えにくい。

    つまり、強みを語っているようで、実はまだ“選ばれる理由”までは言葉になっていないことが多い。


    強みとは、単に優れている点のことではないと思う。

    もちろん、技術や品質は大切だ。
    価格、納期、対応力、実績も大事な要素になる。

    でもブランディングの視点で見ると、強みはもう少し深いところにある。

    それは、
    なぜ、その会社が選ばれているのか
    という理由に近い。

    たとえば「丁寧に作っています」という言葉があったとする。

    それ自体は良いことだけれど、まだ少し抽象的だ。
    そこで、もう一歩だけ深く聞いてみる。

    なぜ、そこまで丁寧に作るのか。
    どんな場面で、その丁寧さが生きているのか。
    誰のために、その丁寧さを守っているのか。

    すると、その会社らしい言葉が少しずつ出てくることがある。

    「修理で戻ってきたときに、長く使われているのを見るとうれしいんです」
    「お客さんが困ったときに、最後に頼ってもらえる会社でいたいんです」
    「派手ではないけれど、毎日ちゃんと使えるものを作りたいんです」

    こういう言葉の中に、本当の強みの輪郭が見えてくる。


    良い会社ほど、自分たちの強みに気づいていないことがある。

    外から見ると特別なことでも、中にいる人にとっては当たり前になっているからだ。

    「そんなの普通ですよ」
    「昔からずっとやってきたことです」
    「特別なことはしていません」

    そう言われることがある。

    でも、ブランディングの仕事をしていると、むしろその“普通”の中にこそ価値があると感じる。

    長く続けてきたこと。
    無意識に守ってきたこと。
    面倒でもやめなかったこと。
    お客さんに言われる前から、自然にやっていること。

    そういう日々の積み重ねが、その会社の強みになっている。

    強みは、突然作るものではない。
    すでにあるものを、もう一度見つけ直すものなのだと思う。


    強みを見つけるときに大事なのは、競合と比べることだけではない。

    もちろん、比較は必要だ。
    市場の中でどう見られているのかを知ることも大切だと思う。

    でも、比較ばかりしていると、自分たちの良さが見えなくなることがある。

    「あの会社の方が大きい」
    「あの会社の方が発信がうまい」
    「あの会社の方が価格が安い」

    そうやって外ばかり見ていると、いつの間にか自分たちの中にある価値を見失ってしまう。

    本当に見つめるべきなのは、
    お客さんがなぜ自分たちを選んでくれたのか
    ということかもしれない。

    過去に言われた何気ない一言。
    長く付き合ってくれているお客さんの理由。
    他社ではなく自社に戻ってきてくれる人の声。

    そこには、会社の強みが隠れていることが多い。

    「対応が早くて助かる」
    「小さな相談にも乗ってくれる」
    「なんとなく安心する」
    「説明が分かりやすい」
    「この人たちなら任せられる」

    こういう言葉は、派手なコピーには見えないかもしれない。
    でも、選ばれる理由としてはとても強い。


    強みを言葉にすることは、自分たちを大きく見せることではない。

    むしろ、背伸びをしないために必要な作業だと思う。

    自分たちは何ができて、何を大切にしていて、誰の役に立てるのか。
    そこを整理できると、無理な見せ方をしなくてよくなる。

    強く見せるのではなく、ちゃんと伝える。
    盛るのではなく、見えるようにする。

    この違いは大きい。

    ブランディングというと、どうしても外側を整えることだと思われがちだ。
    ロゴ、デザイン、コピー、Webサイト、SNS。

    もちろん、それらも必要だ。

    でも、その前にやるべきことがある。

    自分たちの強みを、ちゃんと自分たちの言葉で理解すること。

    ここが曖昧なまま外側だけを整えても、どこか借り物のような印象になってしまう。


    「御社の強みは何ですか?」

    この問いに、すぐ答えられなくてもいいと思う。

    むしろ、すぐに答えられないところから始まる方が自然かもしれない。

    大切なのは、そこで諦めずに問い続けることだ。

    なぜ、お客さんは選んでくれているのか。
    なぜ、この仕事を続けてこられたのか。
    なぜ、自分たちはこのやり方を大切にしているのか。

    その問いを重ねていくと、少しずつ言葉が見つかっていく。

    強みは、どこか遠くに探しに行くものではない。
    日々の仕事の中に、もうすでにある。

    ただ、それがまだ言葉になっていないだけなのかもしれない。


    もし今、自分たちの会社の強みがうまく言えないとしたら、
    それは弱みではなく、まだ整理されていないだけだと思う。

    良い商品がある。
    続けてきた仕事がある。
    選んでくれているお客さんがいる。

    そこには必ず、何かしらの理由がある。

    その理由を見つけて、言葉にして、外に伝わる形にしていく。

    それが、僕の考えるブランディングの大事な一歩だ。

    強みは、作るものではなく、見つけ直すもの。

    そしてその強みが見えたとき、会社の見え方は少しずつ変わっていく。

    そんな事業の気付きが生まれる瞬間に立ち会える喜びは、僕にとっては対価以上の感動がある。

  • Maydo Journal #021

    Maydo Journal #021

    ブランディングを始めるとき、僕が最初に聞きたい質問がある。

    それは、
    「どんな商品ですか?」でも、
    「競合はどこですか?」でも、
    「売上目標はいくらですか?」でもない。

    もちろん、それらも大切だ。
    でも、最初に聞きたいのは、もう少し手前にある問いだ。

    「なぜ、この仕事を続けているんですか?」

    この質問をすると、少し空気が変わることがある。

    すぐに答えられる人もいれば、
    少し黙って考える人もいる。
    「いや、改めて聞かれると難しいですね」と笑う人もいる。

    でも僕は、その少し考え込む時間がとても大事だと思っている。

    なぜなら、ブランドの種は、
    きれいに整えられた言葉の中ではなく、
    その沈黙や迷いの中にあることが多いからだ。


    地方企業や中小企業の方と話していると、
    自分たちの強みを聞かれたときに、
    だいたい似た答えが返ってくることがある。

    「品質にはこだわっています」
    「丁寧に作っています」
    「地域に根ざしてやっています」
    「お客さんとの関係を大切にしています」

    どれも間違っていない。
    むしろ、どれも本当に大切なことだと思う。

    ただ、それだけでは少し届きにくい。

    なぜなら、多くの会社が同じように
    「丁寧です」
    「品質が良いです」
    「地域密着です」
    と言っているからだ。

    だから、僕が知りたいのはその奥にある理由だ。

    なぜ、そこまで丁寧に作るのか。
    なぜ、その品質を守りたいのか。
    なぜ、地域に根ざすことを大切にしているのか。
    なぜ、その仕事を今も続けているのか。

    この「なぜ」の部分に、
    その会社にしかない温度がある。


    以前、ある会社の方と話していたとき、
    最初は「うちの強みは技術力です」と言われた。

    もちろん技術力は大事だ。
    でも、それだけだと少し抽象的で、
    外から見る人には違いが伝わりにくい。

    そこで、いろいろ話を聞いていくと、
    その技術は単に難しいことができるという話ではなく、
    「お客さんが困ったときに、最後までなんとか応えたい」
    という姿勢から生まれていることが分かった。

    つまり、その会社の本当の強みは、
    技術力そのものというより、
    困っている人を放っておけない姿勢にあった。

    この違いは大きい。

    「高い技術力があります」と言うのと、
    「困っている人を最後まで支えるために、技術を磨いてきました」と言うのでは、伝わる意味が変わる。

    同じ事実でも、
    どこに光を当てるかで、
    ブランドの見え方はまったく変わる。


    ブランディングというと、
    新しい言葉を作ることだと思われることがある。

    かっこいいコピーを作る。
    おしゃれなデザインにする。
    見栄えを整える。

    もちろん、それも必要な場面はある。

    でも、僕が大事にしたいのは、
    外から何かを足すことではなく、
    すでに中にあるものを見つけることだ。

    その会社が大切にしてきたこと。
    無意識に続けてきたこと。
    当たり前すぎて言葉にしてこなかったこと。

    そういうものの中に、
    ブランドの核が眠っている。

    だから、最初に聞く質問は、
    「どう見せたいですか?」ではなく、
    「なぜ続けているんですか?」になる。

    見せ方の前に、
    意味を見つけたいからだ。


    面白いのは、
    この質問に対する答えは、
    最初からきれいに出てこないことが多い。

    むしろ、まとまっていない方が自然だと思う。

    「昔からやっているから」
    「先代から続いているから」
    「お客さんがいるから」
    「やめる理由がなかったから」

    最初はそんな言葉でもいい。

    そこから少しずつ掘っていく。

    なぜ、先代から続いていることを守りたいのか。
    なぜ、そのお客さんに応えたいのか。
    なぜ、やめずに続けてこられたのか。

    問いを重ねていくと、
    少しずつ言葉の奥にあるものが見えてくる。

    それは、使命感かもしれない。
    誇りかもしれない。
    悔しさかもしれない。
    誰かへの感謝かもしれない。

    ブランドの核は、
    案外そういう人間らしい感情の近くにある。


    良い会社ほど、
    自分たちの価値を大げさに語らないことが多い。

    「そんなの普通ですよ」
    「当たり前のことをしているだけです」
    「うちは特別なことはしていません」

    そう言う会社の中に、
    実はとても大切な価値が眠っていることがある。

    ただ、それが言葉になっていないだけだ。

    外から見ると特別なことでも、
    中にいる人にとっては日常になっている。

    だからこそ、
    一度立ち止まって、
    自分たちの当たり前を見直す必要がある。

    ブランドづくりは、
    特別なものを無理に作ることではない。

    当たり前の中にある意味を、もう一度見つけ直すこと。

    そう考えると、
    ブランディングはもっと身近なものになる。


    「なぜ、この仕事を続けているんですか?」

    この問いに、すぐ答えられなくてもいい。

    むしろ、すぐに答えられないところから始まることもある。

    大切なのは、
    その問いから逃げずに、
    少しずつ自分たちの言葉を探していくことだと思う。

    会社の強みは、
    資料の中だけにあるわけではない。

    現場の空気。
    職人さんの手の動き。
    お客さんとの何気ない会話。
    長く続けてきた習慣。
    やめなかった理由。

    そういうものの中に、
    その会社らしさはにじみ出ている。

    それを見つけて、
    言葉にして、
    外に伝わる形にしていく。

    それが、僕の考えるブランディングだ。


    もし今、
    自分たちの会社の魅力がうまく伝わっていないと感じているなら、
    まずはこの問いから始めてみてもいいかもしれない。

    なぜ、この仕事を続けているのか。

    その答えの中に、
    まだ言葉になっていないブランドの種がある。

    そして、その種を見つけることができれば、
    会社の見え方は少しずつ変わっていく。

    ブランドは、外から飾るものではなく、
    内側にある意味を、見える形にしていくものだから。